英語

訳語に悩む英単語【award-winning】はどう訳す?

ミントグリーンの背景に金色の優勝カップ

 

翻訳をしていると偶さか。

訳語に困る単語に出くわします。なかには出てくるたびに何度でも頭を抱えてしまう単語もあります。

例えば award-winning

会社概要とか製品説明とかプレスリリースとか、そういう文書にけっこう頻繁に登場します。

特に難しい単語ではありません。award は「賞」です。アカデミー賞は Academy Awards、グラミー賞は Grammy Awards です。グッドデザイン賞の英語表記は Good Design Award となっていますが、いくつかの部門があるならこれも Good Design Awards がよいかもしれませんね。

とりあえず、award は「賞」です。to win an award は「受賞する」、award winner は「受賞者」、award-winning は「賞をもらった」という意味の形容詞です。award-winning author は「賞を取ったことのある作家」だし、award-winning film は「賞を取った映画」です。

Cambridge Dictionary の説明はこんな感じです。

having won a prize or prizes for being of high quality or very skilled
品質や能力が高いことから賞をひとつまたは複数獲得した(物や人)

an award-winning company or product has won an award in a competition because it has been very successful
award-winning company や award-winning product は、高い実績が認められ、コンテストなどで賞を獲得した企業や製品を言う。

英和辞典には「受賞した、賞を取った、受賞歴のある」などの訳語が並んでいます。英英辞典の説明に照らせば、概ねそのような訳語になるかと思います。

でも。

これらの表現は訳文全体のなかでどうもしっくり来ないことが多いのです。

He is an award-winning author.
彼は受賞歴のある作家だ。

He has written two award-winning books.
彼は受賞歴のある本を2冊著した。

He is the author of two award-winning books.
彼は受賞歴のある2冊の本の執筆者だ。

英文の方はまったく問題ありません。よくある普通の言い回しです。

ところが訳文のほうはどうもしっくり来ない。「受賞歴のある作家」はまだしも、2番目と3番目の例文は「受賞歴のある本を書いた」というより、「書いた本が何かしらの賞を受けた」わけで、翻訳にはもうちょっと工夫が必要です。

管理人の実作業にもっと近い例文を出しますと。

Click here to learn more about our award-winning technology.

「弊社の受賞歴のあるテクノロジーについてもっと詳しく知りたい人はここをクリックしてください」という、会社説明や製品説明によくある一文です。

よくある一文ではありますが、やっぱりこの「受賞歴のあるテクノロジー」はどうもひっかかる。

そもそも日本語では「受賞歴のある」という言い方はしない。翻訳ではなく初めから日本語で「これはある賞を取ったことがある」と言う場合に、「受賞歴のある」という形容は使いません。

日本語では「受賞」に言及する場合、賞の名称とか数量とか、権威付けのための情報がもうちょっと追加されます。「名だたる広告賞(映画賞、文学賞、美術賞)を総なめにした」とか「アカデミー賞受賞作」とか「芥川賞(直木賞)作家」とか、そういう表現を使います。

英語の award-winning は、この単語だけでも十分な権威付けになるのですが、日本語の「受賞歴のある」は必ずしもポジティブな印象を与えない。賞の名前がないからたいした賞じゃないのかも、ほんとに取ったのか?なんて思う人もいるかもしれない。

英語の award-winning と日本語の「受賞歴のある」のこの乖離に、翻訳者は苦悩するのです。

ひとつの解決策として、award-winning に「優秀な、卓越した、高い実績を誇る、定評のある、業界を牽引する」などの日本語を充てることが考えられます。

もちろん、これでは「何かの賞を受賞した」経歴を表すことはできません。このような意訳をする場合は、管理人は必ず翻訳原稿にメモを付け、クライアントの判断を仰ぎます

賞をもらったことにこだわるなら「受賞歴のある」という訳語を使うこともできますよと。

ちなみに、管理人の経験に照らしますと、8割方のお客様は「高い実績を誇る、定評のある」という訳語を好まれます。あるいは、賞の名前が分かっている場合はその情報を追加して訳文を作ることもあります。

「受賞歴のある」だけだとやっぱりしっくり来ないんですよね。

原稿に award-winning を見つけると、ああまたか、とため息をつきたくなる管理人でありました。

 

読んでくれてありがとう。おつかれさまでした。